2008年05月13日

薫風

 風薫る季節が来た。別に徘徊老人を目指してトレーニングをしているわけではないが、この季節は特に部屋の中でじっとしていることが出来ずに、気が付けば外に飛び出している。そういう習性からして徘徊老人の素質は、十分に備えているのだろう。

 それはともかく、家を飛び出して向かう先は、大体において近くを流れる舟橋川の堤である。生駒山系の北端にその源流を持ち、枚方市の東部で淀川に合流するこの川は、周りに住む多くの人々にかけがえの無い憩いの場を提供している。つい何週間か前には、川辺に植えられた桜並木が、訪れる人々を極楽浄土へと誘っていた。そして今、その桜たちは、そのピンクの花びらを惜しげもなく落とし、美しい緑へと装いを新たにしている。

      薫風吹き抜ける舟橋川の川辺
     

 その桜並木を吹き抜ける風は、得も言えない香りを持って、訪問者に癒しを届ける。この風のことを薫風というのだそうだ。この香りの正体は、なんでも「フィトンチッド」という物質で、新緑の鮮やかな頃樹木が自らの身を守るために放出するそうな。抗菌・防虫効果をもつこの物質は、人間にとっても自律神経の安定・肝機能の改善・快適な睡眠をもたらすといった効果があるらしい。

 俳句の世界では、この薫風にちなんだ数多くの句が残されているが、われらが松山の生んだ俳人正岡子規も「薫風や 大文字を吹く 神の杜」と詠み、松山市の立花町にある井出神社に句碑が立っている。この神社の境内に張り出された近くの子供たちのお習字の作品の上を、薫風が吹きぬけていく様を詠ったものだ。堤防をあるきながら、そのことを思い出し、子規にあやかってというわけでもないが、あまりにも味気なかった、これまでのサラリーマン生活を振り返りながら、無理やりひねり出してみた。

      薫風や 還暦にして 味を知る



Posted by オイボレブローガー at 11:25│Comments(0)TrackBack(0)

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