2008年05月15日

徘徊・宇治へ―その1

 昨日からの雨は上がったものの、空はどんよりとした曇に覆われているのに、朝食を終えると直ぐにリュックを背負って、部屋を飛び出していた。目指すは、「源氏物語」の舞台、宇治である。この物語が世に出て、今年はちょうど千年になるらしく、このところゆかりの各地で話題沸騰という感じであるる。だから宇治を選んだというわけではなく、単に先日の薫風に味しめて、徘徊癖のスケールが徐々に大きくなってきただけのことである。

 京阪本線の中書島駅で宇治線に乗り換える。これまで、宇治には何度か来たことがあるが、最後に訪れたのは、田舎の両親が大阪に出てきた時だから、おそらく20年近く経っている。その頃すでに父は足を悪くしていて、飛行場内の移動すら車椅子を借りなければならなかった。それでも、孫たちと一緒に平等院を訪れたときは、何とか頑張って皆とお参りしたものだ。あの小旅行は、親孝行というにはおこがましい程のささやかなことだったが、父への最後の贈り物になってしまった。とりとめも無い思いに浸りながら、「黄檗」「六地蔵」などといかにも歴史を感じさせる駅名のわりに、殺風景な沿線の風景をぼんやりと眺めているうちに、「宇治」に着いた。

 平日の10時過ぎとあって、観光地といえ宇治駅はさすがに閑散としている。駅前のコンビニで昼食のおにぎりとお茶を買って外に出る。空模様は、出掛けよりは多少ましになってきたが、いまいちである。「源氏物語ミュージアム」に向かう前に、宇治橋から久方ぶりの中ノ島や対岸の平等院の様子を眺めることにした。

       

 646年に架けられたというこの橋は、その後幾たびか洪水の被害も受けたようだが、今の川の流れは、想像できないほどに穏やかで静かなたたずまいである。平安時代の貴族たちが、別荘地としてこよなく愛したこの地には、源氏物語の「宇治十帖」に語られているような悲恋のほかに、数々の戦乱の歴史も残っている。しかし、川の中央に浮かぶ中ノ島にも、対岸の平等院を包み込んだ木立にも、遠くにかすむ宇治田原・信楽の山々にも、今やその荒々しい姿は影をひそめて、ひたすら長閑である。

    水温む 古(いにしえ)人の 夢の里



Posted by オイボレブローガー at 14:33│Comments(0)TrackBack(0)

この記事へのトラックバックURL

http://irohanioedo.i-yoblog.com/t86347
認証文字を入力してください