2008年05月17日
徘徊物語・宇治三帖-「さわらびの道」
たっぷりと王朝文学を堪能してミュージアムの外に出ると、五月の太陽が燦燦と降り注いでいる。しかし、「浮舟」の悲恋の物語は、まだ頭の中にこびり付いたまま、映画「寅さん」を見た後のように、意識は日常生活から逸脱している。こうなると、眠っていた徘徊老人の資質が、ますます輝きを増してくる。
ミュージアムから「宇治上神社」の脇を下って、宇治川の流れに沿った「朝霧通り」に繋がる、わずか1キロあるかないかの道を、「さわらびの道」と呼ぶらしい。「さわらび」とは「早蕨」と書いて、初物のわらびのことらしい。源氏物語四十八帖「早蕨」に、姉を亡くし独り侘しい思いをしている中君(なかのきみ)のもとに、宇治山の阿闍梨(あざり)から蕨や土筆の初物が届き、父が師と仰いでいた僧からの心遣いがとても嬉しく返歌をしたとある。その「さわらびの道」は、新緑の木立に覆われた静寂の中にありながらも、薫風に揺らめく木漏れ日にきらきらと輝き、何処となく華やいだ趣を醸し出している。
さわらびの道

濃密な薫風が昨夜の深酒を解消して、足取りも軽やかである。ミュージアムを出て直ぐのところに、与謝野晶子の立派な歌碑が立っている。幼い頃から古典文学に親しんだ晶子は、紫式部を終生の師と仰いでいたらしい。その晶子は、「源氏物語」の現代語訳に力を注ぐ傍ら、源氏物語五十四帖を五十四首の歌で再編成した「源氏物語礼讃」を著した。この歌碑は、そのうちの宇治十帖の十首が晶子の真筆で刻まれたものである。「浮舟」の帖に詠んだ歌は「何よりも危なきものとかねて見し小舟の上に自らをおく」とある。源氏物語を読んで、「浮舟」の恋を危険な恋と分かっていながら、いつしか自らも許されぬ恋に落ちていったことに、悔いはないという思いを歌ったのか?
与謝野晶子の歌碑

それにしても、危ない恋という意味では共通点はあるが、薫、匂宮の二人の男に翻弄され、ついには出家して世を捨てた「浮舟」と、歌集「乱れ髪」で男ばかりでなく、時代をも翻弄した晶子とでは、二人の性格はあまりにも違いすぎる。今や徘徊老人予備軍となったこの身にとって、どうでもよいことだが、どちらの女性を選ぶかといえば、断然「浮舟」であるなどと、愚にもつかないことを自問自答しながら、さわらびの道を先に進む。
やがて「宇治上神社」に着く。この神社は、本殿の中の3つの社が、現存する最古の神社建築であることと、拝殿が平安時代の住宅様式が取り入れられた建物であることから、平安神宮とともに世界遺産に登録されているらしい。
ミュージアムから「宇治上神社」の脇を下って、宇治川の流れに沿った「朝霧通り」に繋がる、わずか1キロあるかないかの道を、「さわらびの道」と呼ぶらしい。「さわらび」とは「早蕨」と書いて、初物のわらびのことらしい。源氏物語四十八帖「早蕨」に、姉を亡くし独り侘しい思いをしている中君(なかのきみ)のもとに、宇治山の阿闍梨(あざり)から蕨や土筆の初物が届き、父が師と仰いでいた僧からの心遣いがとても嬉しく返歌をしたとある。その「さわらびの道」は、新緑の木立に覆われた静寂の中にありながらも、薫風に揺らめく木漏れ日にきらきらと輝き、何処となく華やいだ趣を醸し出している。
さわらびの道
濃密な薫風が昨夜の深酒を解消して、足取りも軽やかである。ミュージアムを出て直ぐのところに、与謝野晶子の立派な歌碑が立っている。幼い頃から古典文学に親しんだ晶子は、紫式部を終生の師と仰いでいたらしい。その晶子は、「源氏物語」の現代語訳に力を注ぐ傍ら、源氏物語五十四帖を五十四首の歌で再編成した「源氏物語礼讃」を著した。この歌碑は、そのうちの宇治十帖の十首が晶子の真筆で刻まれたものである。「浮舟」の帖に詠んだ歌は「何よりも危なきものとかねて見し小舟の上に自らをおく」とある。源氏物語を読んで、「浮舟」の恋を危険な恋と分かっていながら、いつしか自らも許されぬ恋に落ちていったことに、悔いはないという思いを歌ったのか?
与謝野晶子の歌碑
それにしても、危ない恋という意味では共通点はあるが、薫、匂宮の二人の男に翻弄され、ついには出家して世を捨てた「浮舟」と、歌集「乱れ髪」で男ばかりでなく、時代をも翻弄した晶子とでは、二人の性格はあまりにも違いすぎる。今や徘徊老人予備軍となったこの身にとって、どうでもよいことだが、どちらの女性を選ぶかといえば、断然「浮舟」であるなどと、愚にもつかないことを自問自答しながら、さわらびの道を先に進む。
やがて「宇治上神社」に着く。この神社は、本殿の中の3つの社が、現存する最古の神社建築であることと、拝殿が平安時代の住宅様式が取り入れられた建物であることから、平安神宮とともに世界遺産に登録されているらしい。
Posted by オイボレブローガー at 10:57│Comments(2)│TrackBack(0)
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この記事へのコメント
いつも楽しく拝見してます。隠れていた才能=文才が徘徊しているうちに顕われてきたんですね。
Posted by 仲村 at 2008年05月17日 13:03
ご無沙汰しております。
中国はいかがでしたか?
ぜひ、お土産話をお聞きしたいものです。近いうちに松山に行く予定ですが、その折に遊びに来ていただいて、久しぶりに飲みながら、聞かしていただくのを楽しみにしています。
住所が決まり次第、連絡させていただきます。
中国はいかがでしたか?
ぜひ、お土産話をお聞きしたいものです。近いうちに松山に行く予定ですが、その折に遊びに来ていただいて、久しぶりに飲みながら、聞かしていただくのを楽しみにしています。
住所が決まり次第、連絡させていただきます。
Posted by オイボレブローガー
at 2008年05月17日 14:15
at 2008年05月17日 14:15